応用インプロワークショップ

2019/1/27@クレオ大阪中央
応用インプロワークショップに行って来ました。

日本学校演劇教育会関西支部とご縁があり、そちらの主催ということで声をかけていただきました。
講師は絹川友梨さん。Improvisation(即興)を「インプロ」という略称で日本に持ち込んだ第一人者です。

インプロは本来、観客のために上演する即興演劇を意味します。俳優たちが舞台上のインタラクションによって作り上げる、台本のないお芝居のことです。

即興演劇を作るためのエキササイズがたくさんあります。コミュニケーション力や協調性、創造性を育てるのにとても効果的なことから、インプロの考え方やトレーニング法を上演目的以外のところで活用する「応用インプロ」にたずさわる人たちも現れました。

私が英語学習にインプロの要素を取り入れようとしているのは、まさに応用インプロの領域です。

この日は、実際に数々のワークを体験しながら、絹川さんからその目的や効果について理論的な解説を聞くことができ、とてもよい学びになりました。

特に印象に残ったことの1つが「意識のベクトル」です。

人の意識は絶えず
①自分
②相手
③自分たちを取り巻く空間
のどれかをうろうろしているそうです。

人の頭はものすごいスピードで活動しており、今誰かの話を聞いている時(②相手ベクトル)でも、頭は全然別のことを考え始めたり、現在を飛び越えて過去や未来に移動したり(①自分ベクトル)します。
話をしながらも周りの空間に気を使うこともできます(③空間ベクトル)。

意識ベクトルが自分の内面に向いている時、心は今ここにない状態です。
教室での学習に置き換えると、先生がいくら話していても、生徒の意識は別のところにあり、話の内容には集中していません。

インプロのトレーニングは、「今ここ」にいる人たちがお互いを見て受け入れ合い、双方のインタラクションによって何かを作りあげるためのものです。
そのために、意識ベクトルを常に②相手と③空間へ導きます。
人の意識を「今ここ」につなぎとめるためのしかけをつくるわけです。

『3文自己紹介(1つはウソ)』

ワークショップで最初にしたワークは、2人組になって順番に行う自己紹介です。
1人が3つのことを話します。ただし、そのうちの1つは嘘なので、聞いている人はどの文が嘘かを見破ります。
嘘を見破るというミッションが加わることで、相手の顔をじっと見て、よ〜く聞くようになります。
意識を「今ここ」につなぎとめるための、とてもよくできたしかけです。

『Two Dots』

2人組で一枚の紙に絵を描くワーク。
紙には2つのドット(●●)だけが描かれています。そこへ、交互に一画ずつ短い線を描いていくわけですが、ことばで相談せず無言で描くのがルールです。
1人で描くのと違って、でき上がった絵に責任がないので気楽に描けます。
パートナーが一画描いたら、もうそれを変えることはできません。相手の線を受け入れて、そこへどのように自分の一画を加えるかを考えます。
お互いに完成したと思ったら、名前をつけます。これも一文字ずつ交互に書きます。

①人の顔バージョン

②動物バージョン

この無言のお絵描きが協調性や創造性を養い、2人でしか描けないユニークな作品ができ上がります。
私とパートナーが動物バージョンにトライした時、ゾウになると思って描いていたのに、なぜかゴリラとして完成に至りました。
途中「あ、しまった!」と後悔した一画もありましたが、お互いに相手の一画を受け入れて作品を発展させていきました。

笑いあり、感心あり、共感ありの楽しい一日となりましたが、指導者として忘れてはいけない大切なことも思い出しました。

「できているかどうかではなく、楽しんでいるかどうかを見る」

楽しさの土台があってこそ頑張れる、そんな教室をこれからもめざしたいです。